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労働相談Q&A

9.業務上のミスに対する損害賠償責任
Q
仕事中に皿を割ったら弁償代を請求された。
A
通常起こり得る過失によって生じた損害については、労働者がその全額を賠償することはない。
法律のポイント
労働者に故意や過失がある場合は、会社が労働者に損害賠償を請求すること自体は違法ではない。しかし、会社は労働者の働きによって利益を上げており、業務上のリスクを労働者にすべて負担させることは不公平であり、労働者への責任追及が制限されるケースは多い。
解説
損害賠償責任が発生するケース

 労働者がわざと(故意)、あるいは通常であればするべきことをしなかった、してはならないことをしてしまったこと(過失)によって会社に損害を与えた場合は、その損害を賠償する責任が発生する。

[例]

  • 業務上の指示に反する取引をして会社に損害を与えた。
  • 指示に反する操作をして機械を壊した。
  • 仕事中に不適切な言動をしたことにより会社がクレームを受けた。
  • 社内の秘匿情報や顧客情報をSNS等で公開し、会社がクレームを受けた。
  • 社用車を運転中に事故を起こし、第三者の身体や物品に損害を与え、会社が賠償金を支払った。
労働者が負担すべき賠償額

 労働者が負担すべき賠償額は、労働者本人の責任の程度、違法性の程度、会社が教育訓練や保険に加入するなどの損害を防止する措置を取っていたかなどの事情を考慮して判断される。
 損害賠償額は会社の言い値ではないので、請求額に納得がいかない場合は、直ちに支払に応じないよう、相談者へのアドバイスが必要。

賠償金の賃金からの控除

 労働者が会社に損害賠償責任を負う場合であっても、会社は一方的に賠償金分を賃金から控除することは法律違反となる(労基法第24条)。
 労働契約や就業規則で、例えば「備品の損壊1回につき10,000円を労働者が弁償する」などの賠償額をあらかじめ決めることも禁止されている(労基法第16条)。

懲戒処分

 損害賠償責任とは別に、会社の秩序に違反する行為について、会社から懲戒処分として減給の制裁を受けることがある。
 減給制裁の場合、①1回の減給額(※)が平均賃金の1日分の半額を超え、②総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1、を超えてはならないとされている(労基法第91条)。

(※)1回の減給額とは、対象となる事案1件のことであり、同一事案について数日間にわたって減給制裁を重ねることはできない。 また、複数の事案については、事案ごとに減給制裁を行う場合には、その複数事案に対する減給の総額につき、上記②の制限を受けることになる。

不就労時間の取扱い
 いわゆる賃金カットには、減給制裁として行われるものと、不就労時間に対する措置として行われるものとがあるから注意を要する。遅刻・早退などの不就労時間に相当する賃金の減額(賃金カット)は、労務の提供がないため、それに応ずる範囲内である限り違法ではない。
賃金計算の端数の取扱い
<遅刻、早退、欠勤等の時間の端数処理>
 5分の遅刻を30分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、労働の提供のなかった限度を超えるカット(25分についてのカット)について、賃金の全額払の原則に反し(労基法第24条)、違法である。なお、このような取り扱いを就業規則に定める減給の制裁として、労基法第91条の制限内で行う場合には、全額払の原則には反しない。
<割増賃金計算における端数処理>
 1カ月における時間外労働、休日労働および深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げることは、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるとして(昭63.3.14 基発150号)、労基法第24条および第37条(割増賃金の支払)違反としては取り扱わない。
罰則

 労基法第24条、第91条違反は30万円以下の罰金、労基法第37条違反は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。

<参照条文>

労基法第16条、第24条、 第37条、 第91条

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