- 対象となる倒産
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倒産は、事実上の倒産である私的整理と、法律上の倒産である破産、会社更生、民事再生、会社整理、特別清算に類型される。
- ① 法律上の倒産:労災保険の適用事業で1年以上事業活動を行ってきた事業主(法人・個人を問わない)が、法律上の手続きをとって倒産した場合。
- ② 事実上の倒産(中小企業のみ):事業活動が停止し、再開する見込みがなく、かつ賃金支払能力がない状態になったことについて労基署長の認定があった場合。
<中小企業(中小企業基本法)の範囲>
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資本金の額又は出資の総額 |
常時使用する労働者数※ |
サービス業を主たる事業 |
5,000万円以下 |
100人以下 |
小売業を主たる事業 |
5,000万円以下 |
50人以下 |
卸売業を主たる事業 |
1億円以下
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100人以下
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その他の事業 |
3億円以下 |
300人以下 |
※「常時使用する労働者数」の判断(通達)
- 在籍出向者…出向元・出向先、両方の労働者数に参入
- 移籍出向者(転籍者)…出向先の労働者数に参入
- 派遣労働者…派遣元の労働者数に参入
- 対象労働者
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- ① 企業の倒産に伴い退職し未払賃金が残っていること(ただし未払賃金の総額が2万円未満の場合は立替払を受けられない)
- ② 倒産について、裁判所や労基署長に申し立てた日から起算して6カ月前の日以後2年間の期間内に退職していること。
- 対象となる未払賃金の範囲
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退職日の6カ月前日からの定期賃金または退職手当の未払い分。定期賃金とは毎月一定期日に決まって支払われる賃金(税金、社会保険料など法定控除前の額)で、毎月の賃金から控除されている社宅料や貸付金返済金は、未払賃金から除かれる。退職手当とは退職手当規程にもとづいて支給される退職一時金および退職年金。
- 限度額
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立替払される額は、未払賃金の総額の80%相当額であり、退職日における年齢に応じて上限額が定められている。
退職日における年齢区分 |
未払賃金の上限額 |
立替払の上限額 |
退職日における年齢 |
45歳以上 |
370万円 |
296万円 |
30歳以上
45歳未満 |
220万円 |
176万円 |
30歳未満 |
110万円 |
88万円 |
- 請求手続き
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- ① 法律上の倒産:裁判所・破産管財人等証明者に立替払請求の必要事項についての証明を申請(証明が得られなかった場合は労基署長に確認申請)。証明書の交付後、労働者健康安全機構に立替払請求書を提出。
- ② 事実上の倒産(中小企業のみ):労基署長に事実上の倒産について認定を申請(立替払請求者が2名以上いる場合はうち1名が認定を受ければ足りる)。認定通知書交付後、労基署長に立替払請求の必要事項について確認を申請。認定確認書の交付後、労働者健康安全機構に立替払請求書を提出)。
- ※請求できる期間は、裁判所が破産等について決定した日または労基署長が認定した日の翌日から起算して2年以内。
- ※船員(船員法第1条)の場合は、立替払請求書の提出先は地方運輸局。
- 賃金債権について
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立替払を受けた場合、労働者の賃金債権は労働者健康安全機構が立替払金に相当する額について代位取得し、本来の支払責任者である使用者に求償することになる。
- 倒産のきざしがある場合
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- ① 労働組合をつくる。
- ② 働いた日の認定のためタイムカードのコピーや、手帳やカレンダー等に労働日と労働時間を記しておく。
- ③ 未払賃金の金額確定のため過去の給料明細書を保存しておく。
- ④ 賃金の遅配・欠配・未払いが発生した時は、会社から未払い証明書(社印のあるもの)をもらっておく。
- ⑤ 賃金や労働条件に関する書類を整備しておく。
- 倒産した場合
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- ① 労働組合をつくる。
- ② 倒産でも無条件に解雇は認められず、合理的理由が必要。偽装や計画倒産等雇用を不当に奪う要素があれば認められない。解雇予告か予告手当の手続きは当然に必要である。
- ③ 職場や施設、資材、商品を確保する。
- ④ 外部の債権者が混乱に乗じて、会社財産を持ち出さないよう労働者が結束して泊り込み体制(24時間)で監視する。
- ⑤ 実力で債権者が持ち出そうとする時は窃盗として警察を呼ぶ。