解雇…使用者による一方的な労働契約の解約。
合意解約…両当事者の合意にもとづいて労働契約が終了すること。
辞職…労働者の一方的な意思表示による労働契約の解約。期間の定めのない労働契約の場合、2週間前に申入れればいつでも解約できる(民法第627条第1項)。
いずれにあたるのかは、いつ、どこで、誰と、どのような状況での話なのかなど、事実関係をよく確認する必要がある。
「退職勧奨」とは、労働者が自由意思で退職する気持ちになるよう誘いかける行為。合意解約の申込みまたはその誘引に過ぎず、労働者は、勧奨に応じる義務はない。社会通念を超えて違法性を帯びる場合は、「退職強要」となり、損害賠償の対象となる場合もある。
解雇は、①普通解雇、②懲戒解雇、③経済上の理由による解雇(整理解雇)に大きく分けられる。
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、権利を濫用したものとして無効である(労契法第16条)。
以下の解雇は法令で禁止され、無効となる。
会社の業績悪化や企業規模の縮小など、経済上の都合による人員整理に伴う解雇である整理解雇の場合、労働者には理由のない解雇であることから、裁判例では次の4つの要件が満たされているかを判断基準としている。
使用者は、労働者を解雇しようとする場合には、
①少なくとも30日前にその予告をしなければならない。
②30日前に予告をしない場合は、30日分以上の平均賃金=解雇予告手当を支払わなければならない。なお、1日について平均賃金を支払った場合には、その日数を短縮することができる(たとえば、20日前に予告し10日分以上の平均賃金を支払う)。ただし、上記の手続きを踏んだからといって、解雇は自由に行えるわけではない。
また裁判上は労基法第114条による付加金と判決確定の翌日から法定利率による遅延損害金の請求もできる。
上記の解雇予告制度は、①日々雇入れられる者、②2カ月以内の期間を定めて使用される者、③季節的業務に4カ月以内の期間を定めて使用される者、④試用期間中の者については適用されない。ただし、①については1カ月を、②③については所定の期間を、④については14日を超えて、引き続き使用されるに至った場合は、適用されることになる。
また、天災事変その他やむを得ない事由により事業の継続が不可能となった場合および労働者の責に帰すべき事由により解雇する場合には、その事由について労基署の解雇予告除外認定を受けて、予告なしに解雇することができる。なお、両者の取り扱いについての認定基準が定められている。
労働者に解雇を予告した場合に、労働者が解雇の理由について証明書を請求した時は、使用者は遅滞なく証明書を交付しなければならない(労基法第22条)。
懲戒解雇とは、懲戒処分として行われる解雇である。使用者は、懲戒処分を行うには、就業規則上の根拠が必要である。裁判例などでは、就業規則に規定があっても、処分対象となる労働者の行為の性質と処分との相当性、先例を踏まえた平等取り扱い、適正な手続きなどが必要とされる。労働者の行為の性質および態様その法の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない懲戒処分は、権利濫用として無効である(労契法第15条)。そのため、懲戒解雇の相談に対しては、懲戒解雇の要件が満たされているか否かを、確認する必要がある。
雇用保険の基本手当の受給日数は、離職理由によって異なり、自己都合の退職になると、給付の受給時期が、会社都合による退職や解雇の場合よりも2カ月遅れる。
解雇なのに、「自己都合退職」 扱いにされたような場合には、会社に離職理由の書き直しを求めたり、ハローワークに解雇理由を確定できる資料を持って出向くなどの方法が考えられる。(→32「雇用保険」も参照)
解雇通告に納得がいかない場合、まず、①解雇理由を文書などで明らかにさせ、② 口頭か文書で、解雇は了解できない旨を通告し、③解雇予告手当を一方的に支払ってきた場合でも、給料分として受領した旨を明示しておく必要がある。その上で解雇の不当性を主張し、裁判所に申し立てたり、労働局・労働委員会を活用することができる。できるだけ早い時期に労働組合が介在して経営側と交渉することが望ましい。
労基法第3条、第19条、第20条、第104条違反は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。
労基法第3条、第19条、 第20条、 第21条、 第22条、第75条、第104条、第119条
労基法施行規則第7条
労契法第15条、第16条
安衛法第97条
労組法第7条
賃金確保法第14条
じん肺法第43条の2
男女雇用機会均等法第9条
育児・介護休業法第10条、第16条、第16条の4、第16条の7民法第1条、第90条、第627条第1項