労働相談

 

労働相談Q&A

40.妊産婦保護、妊娠に伴う不利益取扱い
Q
妊娠したので時間外労働を断りたいけれど、会社が認めてくれない。
A
妊産婦が請求した場合は時間外・休日労働・深夜業をさせてはならない。
法律のポイント
男女雇用機会均等法、労基法によって妊娠中および産後1年を経過していない女性(妊産婦)に対する健康管理や時間外労働の制限、業務転換、産前産後休業などが定められている。
解説
妊娠中および出産後の健康管理に関する措置

 妊娠中および産後1年を経過していない女性が申請すれば、下記の範囲内で年次有給休暇とは別に女性労働者が母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならない(男女雇用機会均等法第12条)。

産前――妊娠23週まで ――――――― 4週に1回
    妊娠24週から35週まで ――― 2週に1回
    妊娠36週から出産まで ――― 1週に1回 
産後――医師や助産師の指示によるところ

妊産婦の業務の取り扱い

 事業主は、上記の保健指導または健康診査にもとづく指導事項を守ることができるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法第13条)。

 妊産婦とは、妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性をいう。
軽易業務への転換請求:妊娠中の女性は、ほかの軽易な業務への転換を請求することができ、使用者はこれに応じなければならない(労基法第65条第3項)。「軽易な業務」とは、原則として請求した業務である(新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない)。
時間外労働の制限:妊産婦から請求があった場合は、時間外労働、休日労働および深夜業をさせてはならない。各変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)による場合でも同様であるから、請求があれば対象者から除外することになる(労基法第66条)。

危険有害業務への就業制限

 女性については妊産婦を中心とした就業制限が定められている(女性労働基準規則)。その概要は、対象業務として24の業務が列挙され、業務ごと・対象者ごとに就業禁止、不就労申出による就業禁止、制限なしと定められている。

産前産後休業

産前休業:産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内の期間は、本人の休業請求により就業禁止となる。
産後休業:産後8週間は原則的に就業禁止であるが、6週間を経過後で本人が希望した場合で、医師が支障がないと認めた業務には就労させてもよい。この期間の起算日は出産日となり、「出産」とは妊婦4カ月(85日)以上の分娩をいい、死産や流産、人工中絶の場合も含まれる(労基法第65条)。これらの休業期間は、年休の発生要件である出勤率の算定に当たっては出勤したものと取り扱われる(労基法第39条第8項)。

休業中の賃金の取り扱い

 有給か無給かは就業規則等の定めによる(労基法には特段の規定なし)。なお、健康保険の被保険者は出産育児一時金(原則42万円、なお、産科医療補償制度加算対象出産ではない場合は40万8千円。うち1万2千円は産科医療補償責任保険契約の保険料分)と出産手当金(休業給付として、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額)を受給できる。

社会保険料の免除

 産前産後休業中の社会保険料は免除されている。

解雇制限

 産前産後休業期間中の女性(休業請求をせず就業している女性を含む)を解雇することはできない(労基法第19条)。妊娠中・出産後1年以内の女性労働者に対する解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とするものでないことを立証できなければ無効となる(男女雇用機会均等法第9条第4項)。

不利益取扱いの禁止・防止措置義務

 事業主は、妊娠・出産や産前産後休業を請求したことその他の妊娠または出産に関する事由を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない(男女雇用機会均等法第9条第3項)。
 また、上司・同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為を行わないよう、事業主は防止措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法第11条の2、育児・介護休業法第25条)。

「妊娠又は出産に関する事由」とは

 男女雇用機会均等法施行規則第2条の2では、以下の事由とされている。

  1. ① 妊娠したこと。
  2. ② 出産したこと。
  3. ③ 母性健康管理措置を求め、又はその措置を受けたこと。
  4. ④ 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと
  5. ⑤ 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと。
  6. ⑥ 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと。
  7. ⑦ 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと。
  8. ⑧ 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと。
  9. ⑨ 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと。
「不利益な取扱い」の例
  1. ① 解雇すること。
  2. ② 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
  3. ③ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
  4. ④ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
  5. ⑤ 降格させること。
  6. ⑥ 就業環境を害すること。
  7. ⑦ 不利益な自宅待機を命ずること。
  8. ⑧ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
  9. ⑨ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。
  10. ⑩ 不利益な配置の変更を行うこと。
  11. ⑪ 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。
育児時間

 生後満1年に満たない子を育てる女性は、就業時間中の通常の休憩時間のほか、1日2回少なくとも各30分の育児時間を請求できる(労基法第67条)。なお、土曜日の半日勤務や短時間勤務の場合など1日4時間以内の労働の場合には、1日1回でも可となっている。育児時間の賃金は労使の話し合いによる。

生理休暇

 生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合には、休業することができる(労基法第68条)。

罰則

 労基法第64条の2、第64条の3、第64条の5~第67条違反は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。第68条違反は30万円以下の罰金。

<参照条文>

労基法第12条、 第19条、 第39条第8項、 第64条の2、 第64条の3、第64条の5~第68条
男女雇用機会均等法第9条、 第11条、第12条、 第13条
男女雇用機会均等法施行規則第2条の2
育児・介護休業法第25条
健保法第101条、 第102条
労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)

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