妊娠中および産後1年を経過していない女性が申請すれば、下記の範囲内で年次有給休暇とは別に女性労働者が母子保健法による保健指導または健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければならない(男女雇用機会均等法第12条)。
産前――妊娠23週まで ――――――― 4週に1回
妊娠24週から35週まで ――― 2週に1回
妊娠36週から出産まで ――― 1週に1回
産後――医師や助産師の指示によるところ
事業主は、上記の保健指導または健康診査にもとづく指導事項を守ることができるよう、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法第13条)。
妊産婦とは、妊娠中の女性および産後1年を経過しない女性をいう。
軽易業務への転換請求:妊娠中の女性は、ほかの軽易な業務への転換を請求することができ、使用者はこれに応じなければならない(労基法第65条第3項)。「軽易な業務」とは、原則として請求した業務である(新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない)。
時間外労働の制限:妊産婦から請求があった場合は、時間外労働、休日労働および深夜業をさせてはならない。各変形労働時間制(フレックスタイム制を除く)による場合でも同様であるから、請求があれば対象者から除外することになる(労基法第66条)。
女性については妊産婦を中心とした就業制限が定められている(女性労働基準規則)。その概要は、対象業務として24の業務が列挙され、業務ごと・対象者ごとに就業禁止、不就労申出による就業禁止、制限なしと定められている。
産前休業:産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内の期間は、本人の休業請求により就業禁止となる。
産後休業:産後8週間は原則的に就業禁止であるが、6週間を経過後で本人が希望した場合で、医師が支障がないと認めた業務には就労させてもよい。この期間の起算日は出産日となり、「出産」とは妊婦4カ月(85日)以上の分娩をいい、死産や流産、人工中絶の場合も含まれる(労基法第65条)。これらの休業期間は、年休の発生要件である出勤率の算定に当たっては出勤したものと取り扱われる(労基法第39条第8項)。
有給か無給かは就業規則等の定めによる(労基法には特段の規定なし)。なお、健康保険の被保険者は出産育児一時金(原則42万円、なお、産科医療補償制度加算対象出産ではない場合は40万8千円。うち1万2千円は産科医療補償責任保険契約の保険料分)と出産手当金(休業給付として、1日につき標準報酬日額の3分の2相当額)を受給できる。
産前産後休業中の社会保険料は免除されている。
産前産後休業期間中の女性(休業請求をせず就業している女性を含む)を解雇することはできない(労基法第19条)。妊娠中・出産後1年以内の女性労働者に対する解雇は、事業主が妊娠・出産等を理由とするものでないことを立証できなければ無効となる(男女雇用機会均等法第9条第4項)。
事業主は、妊娠・出産や産前産後休業を請求したことその他の妊娠または出産に関する事由を理由として、解雇その他不利益な取り扱いをしてはならない(男女雇用機会均等法第9条第3項)。
また、上司・同僚が職場において、妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする就業環境を害する行為を行わないよう、事業主は防止措置を講じなければならない(男女雇用機会均等法第11条の2、育児・介護休業法第25条)。
男女雇用機会均等法施行規則第2条の2では、以下の事由とされている。
生後満1年に満たない子を育てる女性は、就業時間中の通常の休憩時間のほか、1日2回少なくとも各30分の育児時間を請求できる(労基法第67条)。なお、土曜日の半日勤務や短時間勤務の場合など1日4時間以内の労働の場合には、1日1回でも可となっている。育児時間の賃金は労使の話し合いによる。
生理日の就業が著しく困難な女性が請求した場合には、休業することができる(労基法第68条)。
労基法第64条の2、第64条の3、第64条の5~第67条違反は6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金。第68条違反は30万円以下の罰金。
労基法第12条、 第19条、 第39条第8項、 第64条の2、 第64条の3、第64条の5~第68条
男女雇用機会均等法第9条、 第11条、第12条、 第13条
男女雇用機会均等法施行規則第2条の2
育児・介護休業法第25条
健保法第101条、 第102条
労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針(平成18年厚生労働省告示第614号)